なでしこジャパンのワールドカップが終わりました。
前回の優勝という結果から見るとちょっと残念に思うところもありつつ、世界二位という素晴らしい結果を残してくれました。
結果に関してはこれ以上触れずに前回の男子のワールドカップと同じく、カイロプラクター目線で女子ワールドカップサッカーを振り返ってみたいと思います。
骨折はアウト、膝の怪我は・・・?
予選リーグの一試合目で安藤梢選手が足を骨折し帰国しました。
キャンプ中から絶好調で、試合でも良い動きを見せていただけに本人も無念だったに違い有りません。
決勝の舞台ではそれまで白くまが置かれていた椅子に本人が座り、チームメイトと同じグラウンドサイドには居ましたが、試合には出られませんでした。勿論、骨折だから試合に出られないのは当たり前すが、試合中の骨折などは「(気が付かなったので)結果的にフル出場した」といったケースもあります。
安藤選手と同じFWの岩渕真奈選手は合宿中に膝を怪我しました。その後、精密検査を受け、予選リーグは絶望的と報道されていました。しかし、本大会では予選の三試合目の最後10分で出場し、その後の決勝トーナメントでも切り札として出場し続けました。
岩渕選手の怪我の程度は報道されている限りでは正確には解りません。
過去の怪我やテーピングをしっかり巻いていることを考えると長時間ピッチに立てる様な状態では無かったのかもしれません。ですが、結果としては岩渕選手はワールドカップのピッチに立ちました。本来のパフォーマンスは発揮できなかったかもしれませんが、プレーし、オーストラリア戦では得点を上げチームを勝利に導きました。
安藤選手が出場できなくなった理由は単純です。
試合に出られない=その怪我がある場合、試合に出ると大きなリスクが有る、もしくはパフォーマンスが発揮できないからです。
骨折が判明した場合は、ほぼ出場を見送る措置が取られます。骨折したままサッカーの試合をするにはリスクがあるからです。解りきった話・・・と思うかもしれませんが、骨折だけではなく、脳震盪だった場合や捻挫、打撲だった場合なども同じように判断されます。
アウトかそうじゃないかを決めるライン
試合に出られるかどうかを判断する上で、試合前と試合中で少し違いが有ります。
試合前の怪我や故障に関しては、基本的には回復とリハビリの程度に拠ります。靭帯再建手術をしようが、骨折をしようが、ちゃんと回復し、相応のリハビリと準備が整っていれば問題なく試合には出られます。
ただ、試合中の場合は難しい判断になります。
そもそも情報が少ないこと、もう一つはその少ない情報で的確な判断をする必要があるからです。
ただ、幾つかの問題はリスクを判断する前にアウトになるものが有ります。
・脳震盪
すぐに立ったか、意識があるかはあまり判断の材料に成りません。仮に脳に損傷があったとしても損傷の程度に拠っては其の時に症状が出ないこともあるからです。
・骨折や脱臼
それが疑われる場合も含めてアウトです。
脱臼は整復したとしても、周囲には損傷があります。また、骨折は箇所によっては気づき難い事もあるかもしれません。疑いが強い場合も含めて、直ぐにでも精密検査を受ける必要性があります。
・痙攣
1~2回なら、ふくら脛だし・・・という回数や場所の問題ではなく、電解質不足など痙攣で起こる問題の殆どは試合中にリカバリーできません。
脱水や電解質不足が深刻になれば命に関わりますし、過剰な電解質のチャージもリスクが有ります。また、パフォーマンスも低下しますので、他のトラブルを誘発するリスクも高くなります。
他にも直ぐに交代しアウトになるケースはありますが、上記はジュニア年代から大人世代のあらゆるスポーツで当てはまる、見る機会が多い例だと思います。
※サッカーの場合、旧西ドイツのベッケンバウアーが試合中に右肩を脱臼し、テーピングで固定した状態でプレーを続けたのは有名な話です。ですが、交代枠が残っていなかったことなどを考えると気合や根性でこなせる様な話では有りませんので参考にしないでください。
FIFAがサッカーチームにカイロプラクターを推奨?
FIFA医療委員会が出したF-MARC Football Medicine Manual(日本語版)ではサッカーチームの障害予防や怪我のコントロールをするメンバーとしてカイロプラクターの名前を挙げています。実際に海外の代表チームやクラブチームには多くのカイロプラクターが居ます。ブラジルワールドカップのイタリア代表チームや同じイタリアのフィオレンティーナ、ブラジル代表チーム、など様々なチームに取り入れられています。
これは我々が上記のような試合に出続けるリスクを判断するからという話だけではなく、そういったトラブルを未然に予防する為の手助けが出来るからです。
コンディションニングとパフォーマンスに大きな影響が有る、静的なアライメント(姿勢や関節も含めて)から、動的なアライメントまでをチェック、判断するのは我々の十八番です。また、それらと身体機能(筋機能や関節可動域など)を結びつけて評価する事も我々カイロプラクターの得意とする分野です。
本来、怪我やトラブルは無いに越したことは有りません。ですので、
・怪我をしたらケア、リハビリを行う。(従来通り)
・怪我を減らすためにトレーニング期でもコンディションを整える。(予防)
・試合に向けて調子、コンディションを上げる。(ピーキング)
といった選手側の環境整備が必要になってきます。
今回の安藤選手の様に準備が万全であっても怪我をするのがスポーツです。怪我を無くすことは不可能かもしれませんが、途中交代するかしないかも含めて、避けられるトラブルは回避するという意識が必要です。
岩渕選手が戻ってこられた経緯、怪我の状況は解りません。ですが、どんな怪我であったにせよ、無事に復帰し、決勝点を挙げたあのシーンの裏には、なでしこジャパンのサポートチームがあってこそと思うと更にドラマチックに映りませんか?